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Channel: 桜井識子オフィシャルブログ「~さくら識日記~」Powered by Ameba
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桜井識子バージョン「ごんぎつね」下編

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これまでのお話桜井識子バージョン「ごんぎつね」上編桜井識子バージョン「ごんぎつね」中編 次の日もその次の日も、毎日毎日、ごんはせっせと栗を拾って兵十の家に届けました。 栗は、トゲがある「イガ」に入っているので、取り出すのがたいへんです。 ごんは毎日、「イテテ、とげが刺さったー」「こっちのイガ、固すぎる~、イテー!」と大騒ぎをしながら、イガと格闘していました。 栗を拾っているさいちゅうに、まつたけを見つけたことがあって、「兵十はまつたけも喜ぶかな」と思ったごんは、それからはまつたけも持って行くようになりました。 そんな忙しい毎日を送っていたある夜のことです。 寝るのがもったいないほど、お月さまが明るく輝いていました。 ごんは久しぶりに夜の散歩に出かけました。 チンチロリン、チンチロリン、と虫が鳴いています。 行くあてもなくぶらぶらと歩いていると、向こうから誰かがやってきます。 ごんはあわてて草むらに隠れました。 やって来たのは兵十と、お百姓の加助でした。 2人は話をしながら近づいてきます。 「なぁ、加助」 「ん?」 「俺の家で、最近、不思議なことが起こるんだ」 「ほ~、どんな?」 「おっかぁが死んでから、誰かが毎日、栗やまつたけをくれるんだよ」 「へ~、タダでか? すごいな、誰だろう?」 「それがわからんのだ。俺の知らないうちに置いてくんだ」 話の続きを聞きたいと思ったごんは、2人のあとをついて行きました。 「そりゃ不思議だな」 「だろう?」 「栗やまつたけは本物なのか?」 「ああ、本物だ。化かされているわけじゃないぞ。なんなら明日、見に来いよ」 吉兵衛というお百姓の家に着いた2人は、会話をしながら中に入っていきました。 家の中からはポンポンポンポンと木魚の音が響いてきます。 窓の障子にはお坊さんの影が映っていました。 「お念仏があるんだな」 そう思ったごんは外で待つことにしました。 しばらくすると、兵十と加助が一緒に出てきました。 2人は肩を並べて歩きます。 月明かりでできた兵十の影法師を、ぴょんぴょんと踏みながら、ごんも後ろからついて行きました。 「さっきの話だけどな、兵十、そりゃ、きっと……神さまのしわざだぞ」 「えっ? 神さま?」 「俺はあれからずっと考えてたんだがな、そんなことをするのは人間じゃなさそうだ。神さまだ。それしか考えられねぇ。お前がひとりぼっちになったのをあわれに思って、いろんなものを恵んでくださるんだろうよ」 「そうかな?」 「そうだとも。だから、毎日神さまにお礼を言えよ、兵十」 「うん、そうだな、そうするよ」 えー、と後ろで聞いていたごんは思いました。 「オラが苦労して拾っている栗なんだけどな~、神さまのおかげってことになるのか……お礼は神さまか……」 ごんはちょっぴり寂しい気持ちになりました。 元気がなくなったゴンは、うつむいて、とぼとぼと歩きました。 そうすると、もう兵十の影法師についていけません。 しょんぼりと落ち込んでいたごんでしたが、はたと気づきました。 「あれ? それってオラを神さまだと思ってる……ってことじゃないか?」 暗い気持ちだったごんは、なんだかワクワクしてきました。 「よし、明日からはもっといっぱい栗やまつたけを持っていってやろう。兵十、びっくりするぞ~。神さまにお礼を言ったら、もらえるものが増えた! って」 ごんはますます楽しくなりました。 「目を真ん丸にして驚くかな」 はずむ気持ちを押さえられなくて、うふふ、うふふと笑いながら夜道を帰りました。 次の日、ごんは栗とまつたけだけじゃなく、たくさんの柿や山ぶどうも持って兵十の続きをみる

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