※前回の続きです。 千年以上の時を超えた桃の種を、じいぃぃぃぃーっと見つめたおしていると、種が、ですね、主張をしてくるのです。 「気」で。 私らただのお供えものではなかった、と。 祭祀に使ったのでは? 占いに使ったのでは? とも言われていますが、桃は「邪気を祓う」と古くから伝わっているものですから、そっち方面で使用したのではないかと思いました。 古来中国では、桃には魔を祓う力があると考えられ、それが西王母信仰と結びついて、不老不死をもたらす実となったようです。 桃に関連した魔除けの風習が中国には多く残っていて、旧暦の元旦に、桃の木でできた魔除けのおふだを門に掲げるという桃符(とうふ)もそのひとつです。 古事記にも黄泉の国からの追手を桃の実で退けるお話がありますから、魔除けパワーは本当にあるのではないかと思いました。 そこで、私は次の夏に、せっせと桃を食べ、種を集めました。 集めた種は天日で乾燥をさせます。 実をそぎ落として種だけの状態にする段階で、あっさりと、パカ、と割れる種が多く、そういう時は心底、「ンモー!」となりました。 パカ、と簡単に割れるので、絶望感を味わうことが多いです。 皆様が、ガーン! とならないよう、先に言っておきます。 種類によるのか、現代の桃は根性がないのか、そのへん詳しくないので、よくわかりませんが、種は本当によく割れます。 それから、「え? 種が小さすぎじゃない? これって……桃?」という桃もあって、大古事記展で見たものと全然違う種だったこともあります。 結局、小さかったり割れまくったりして、数個しか手に入りませんでした。 その次の夏もまた、同様にやって数個確保しました。 天日で乾かすのも、結構日にちがかかります。 こうして乾燥させた桃の種ですが……結論から言いますと、たしかに邪気を祓います。 祓うというよりも……吸い込んで閉じ込めるのです。 でも、そんなに強力ではありません。 盛り塩と同じくらいです。 置いている、その場所のみを浄化してくれます。 効果は盛り塩とほぼ変わりませんが、決定的に違う部分があります。 まず塩のほうは、邪気が塩に溜まってくると塩自体が良くないものに変化し始めて、良くない「気」を放ち始めます。 日々、どんよりと重たくなっていきますから、塩はこまめに取り替えなければなりません。 しかし、桃の種は邪気を閉じ込続きをみる
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