たまたまその場に居合わせて、そのシーンを見て、いたたまれなくなった……なんとも言えない気持ちになった……という経験は、きっとどなたにもあることと思います。 私にも、何年経っても忘れられない場面がいくつかあります。 そのうちの一つですが、これはスイミングスクールの更衣室での出来事です。 運動不足を解消するにはプールが良い、と聞いた私は、お試しキャンペーン期間にお邪魔をしてみました。 プールで泳いだあと、更衣室に戻ると、女性が4人いました。 その時プールでは、園児のスイミング教室をやっていましたから、その園児たちの母親のようでした。 3人がかたまっておしゃべりをし、少し距離をおいて1人がスマホをさわっていました。 同じ幼稚園の子が3人いて、1人だけ幼稚園が違うのかな、と思いました。 3人は、ランチが美味しいと評判のお店の話をしていて、「今度、一緒に行かない?」「うん、行く行く!」「いつにする? 楽しみー!」と、すごくはしゃいでいます。 3人のお母さんは仲良しなのね、と思いましたが、「楽しみ〜!」と言いつつ、3人はチラチラと1人ぼっちのお母さんの反応を見ています。 その顔には「ザマーミロ」感が漂っていて、あれ? と思いました。 1人ぼっちのお母さんは、「私はいま、必死にスマホをいじっています、だから聞こえていません」という演技をしています。 その後も3人は、仲が良いアピールをし、「こないだあそこに行って楽しかったよね〜」「面白かったよね!」「〇〇さん、あの時はありがとうね」などと言っていました。 3人は、そう言いながらも、意地悪そうにチラチラと1人ぼっちのお母さんを見るのです。 1人ぼっちのお母さんは、ますますスマホを顔に近づけて、スマホに集中しようとしていました。 雰囲気からすると、4人は少し前まで同じグループで仲良しだった、という感じです。 「こういうのって根暗な人がひとり入ると台無しになるのよね」 「根暗って、もしかして私のこと?(笑)ごめ〜ん、私、根暗で〜」 「〇〇さんが根暗だったら、世の中の人みんなが根暗になるわ〜(笑)」 と、3人が一斉に1人ぼっちのお母さんを見て、笑っていると、子どもたちがプールからあがってきました。 全員が、自分のお母さんをめがけて走って来ます。 体を拭いてもらいながら、3人のほうの子ども(Aちゃん)が言いました。 「今日、Bちゃんちに遊びに行っていい?」 そう言われた母親は、チラリと1人ぼっちのお母さんを見ました。 1人ぼっちのお母さんの子ども(Bちゃん)も、「今日、Aちゃんと遊ぶ約束をしたの! うちで遊んでもいいでしょ?」と言っています。 BちゃんとAちゃんは、顔を見合わせて、ニコニコしています。 Aちゃんの母親が「今日は用事があるから、また今度ね」と言うと、事情がわからないAちゃんは「えー」と不満げな声を出していました。 「じゃあ、明日行っていい?」とAちゃんが明るく聞くと……母親はサッと話題を変えていました。 私はそこで着替えが済んだので、更衣室を出ました。 幼稚園児の子どもが仲良くできるのに、どうして大人が仲良くできないのだろう……と思いました。 1人ぼっちのお母さんは子続きをみる
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